Navigation

私の英語勉強法/陣内智則さん(お笑い芸人)

The Yomiuri Shimbun

「やりたいネタはたくさんあるので、自分の英語力を上げれば、もっとできるのになと思う」と語る陣内智則さん(撮影・林陽一)

The Japan News笑いのテンポ そのままに

バラエティー番組でおなじみのお笑い芸人・陣内智則さんは、5年前から海外でのお笑い単独ライブに挑んでいる。言葉や文化などが異なる数百人の観客を前に一人で舞台に立ち、海外仕様に仕立てた持ちネタを、現地の言葉でテンポ良く展開するには、日常の英会話とは異質の難しさがある。海外公演を成功させた秘けつとは? 陣内さんに聞いた。

* * *

Speech

◆誰もやっていないから挑戦

ボケの要素満載の映像や音声に、ツッコミを入れまくるネタで知られる。テーマに選ぶのは、視力検査や卒業式、英語の授業など、身近な話題だ。米ロサンゼルスの劇場で8月、自身にとって3回目となる海外単独お笑いライブを開催した。日本でもステージに立つ時は「今でもすごく緊張する」。それ以上に緊張しながら、700人余りの観客を前に、入念に仕込んだ英語のネタを丸暗記して約90分間の舞台に臨んだ。

海外での挑戦を思い立ったのは2010年頃。最初に海外単独ライブを実現させたのは、英語圏ではなく韓国だった。韓国人の通訳に「(動画投稿サイト)ユーチューブで見ていますよ」と言われた。「ネタをユーチューブで見られたら、まさしくネタバレする!」と複雑な気持ちもしたが、ファンが英語で字幕を付けた動画などをきっかけに、海外でも自身の存在が知られるようになった。

日本のお笑いを海外で行うことについて、「僕しかできへんやろな。誰もやっていないから、挑戦しようかな」という思いが募った。当時、スケジュールにも比較的余裕があり、「しんどいのは分かっているけど、何か一つ、自分が頑張っているという感覚を自分なりに持ちたかった」とも感じていた。所属する吉本興業で働く韓国人スタッフから韓国語を教えてもらうなどして、2011年にソウルで、ネタを韓国語で披露した。

◆アメリカ仕様のお笑いとは?

次なる挑戦は14年、米ラスベガスだった。エンターテインメントの本場で自分を試したいとの思いに駆られた。英語は、中学・高校時代に「授業で点を取るために何かを覚えていただけ」で、得意ではなかった。それでも、これまで「子供から大人まで分かるネタを作ってきた」という自負はある。「世界の人も分かるんちゃうかな?」と当初は甘く考えていた。だが、日本でウケたネタを英訳して客の前で話せば笑いが取れるという単純な話ではなかった。オーストラリア出身で同じく吉本所属のお笑い芸人チャド・マレーンさんに米国公演向けのネタ選びを手伝ってもらうと、ネタの中で日本人にしか伝わらないくだりがあることに気付かされた。

まずは、米国でも理解される内容かどうか、「ネタの洗い出し」からスタート。「セミの寿命は1週間」とは、日本人なら誰でも聞いたことがあるかもしれないが、米国では一般的に知られておらず、ネタにしても理解されない、とチャドさんから指摘された。

観客に見せる映像も工夫した。例えば、パズルゲーム「テトリス」のネタ。日本では、パズルのピースが落ちる場面の映像の中で、人気アニメ映画「となりのトトロ」のキャラクターも登場させていた。日本なら確実に笑いが起きるところだ。だが、この面白さは、トトロを知らない米国の人たちには通じない。考えた末、米国人たちにも人気の「スパイダーマン」のキャラクターと、チョコレート菓子「キットカット」を登場させた。

お笑いにとって命とも言える「ボケ」「ツッコミ」に加え、ボケた後とツッコむまでの時間である「間」をどうするか。テンポが悪いと全てウケなくなる。ツッコミのせりふの定番「なんでやねん」の一言も、英語で意味が伝わるようにすると、とても長い言い回しになるとチャドさんに言われ、ツッコミの言葉選びに腐心した。

「ボーリング」のネタでは、ボールがピンに命中したのに、ピンが倒れない映像を観客に見せる。日本語ではピンが「カタッ!(堅い)」とすかさずツッコミを入れる場面だが、チャドさんが当初英訳したせりふは長かった。日本語の「カタッ」に極力近いリズムや表現を考え、“It’s stiff.” で決着した。

英語のせりふのテンポや、自分が覚えられそうかどうかを確認した上で、全て丸暗記した。チャドさんの音声を録音して繰り返し聞き、練習を重ねた。覚えられないせりふは書いて覚えた。

懸命に準備して臨んだ米国公演だったが、何もかも手探りで、「これ、伝わるかな?」と自信なさげにやっていた。「本当に英語を間違えた時は、全然ウケなかった」うえ、LとRの発音の区別などがうまくできず、公演後、観客からは「何を言っているのかよく分からなかった」とも言われた。ただ、すらすらと話せていると実感したときは、観客が一斉に笑い、「この英語は伝わっているんだ」と手応えも感じた。

◆今からでも間に合う!

せりふをどんなに暗記しても舞台に立てば緊張する。すると、練習を重ねてきた発音がうまくいかなくなることもある。今年のロサンゼルス公演は、チャドさんから言われた「心からしゃべっている方が伝わる」という言葉を胸に臨んだ。

海外公演が縁で、日本での仕事でも英語とつながりができた。NHKからは、中学英語の学習番組への出演オファーをもらい、昨年から「エイエイGO!」(Eテレ)に出演している。「こんなに英語ができない人でも、多少なりとも勉強していったらここまでできるという、僕はサンプルみたいなもの」と笑う。

外国人の友達はいないし、語学番組の収録も頻繁にはない。バラエティー番組の出演にも追われる。「英語にもっと触れないといけないと思いつつも、やっぱり普通に生活していたら英語に触れる機会は少ない」

だからこそ、英語の会話が聞こえると、意識して耳を傾けるようにしている。まだまだ分からないことが多いが、理解できた時の喜びは格別だ。語学番組の収録の時は英語に関する質問をしたり、米国人共演者に、自身のネタが理解できるか尋ねたりもする。

次の海外公演先は未定だが、ニューヨークやロンドンに思いをはせている。「学生時代にきちんと英語を勉強しておけばよかった」と感じることもあるものの、「これからは日常的に使うこともあるだろうし、使えて損はない。僕は42歳だけど、遅くないと思っている」と英語学習への意欲を示す。「やるからには、もっと笑いを取らなあかん」

(熊倉由佳)

Speech

* * *

じんない・とものり 1974年、兵庫県加古川市生まれ。「ABCお笑い新人グランプリ」第19回優秀新人賞受賞。2016年8月1日にロサンゼルスにて単独ライブ「NETAJIN in LA」を全編英語で開催し、成功を収める。お笑い芸人、番組MC、俳優として多方面で活躍。Speech

Click to play

0:00/-:--

+ -

Generating speech. Please wait...

Become a Premium Member to use this service.

Become a Premium Member to use this service.

Offline error: please try again.