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私の英語勉強法/豊田潤弐さん(日本航空パイロット)

The Yomiuri Shimbun

「帰国子女の同僚に引け目を感じたものだが、オンラインで英会話を特訓し、それがなくなった」と話す豊田潤弐さん(萩本朋子撮影)

The Japan News情報を正確に伝達することが第一

旅客機のパイロットと言えば、「英語ができる人の職業」といったイメージが強い。しかし、日本航空の副操縦士である豊田潤弐さんはむしろ、英語を不得手としてきた。初の飛行訓練で、まともな受け答えをする余裕すらなかったほどだ。それでも諦めずに仕事を続けていて、あることに気づいた。ネイティブ・スピーカーではない自分が英語を使いこなすには、正しい知識に裏打ちされた「正確な英語」を身に着けることが一番だと。

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Speech

◆「ゆっくり、はっきり」

パイロットは、国内線で経験を積んでから国際線に乗務するのが通例だ。今年5月に副操縦士になってから、飛んでいるのは国内だけだが、航空管制官との無線でのやり取りは全て英語だ。操縦時に管制官から飛行高度や着陸時の進入角度について指示を受けたら、それを復唱するのが決まり。数字が絡んでいる場合は特に「ゆっくり、はっきり」発音するようにしている。「聞き間違いや言い間違いをしないようにすること」が第一だからだ。

航空無線は英語が公用語。英語圏のネイティブ・スピーカーの発音とは異なる、独特の発音法が採用されている。例えば、数字の3 (three) は、舌を上下の歯で挟んで出す「ス」(th) の音は使わず、「トゥリー」(tree) と発音する。1000 (thousand) なら「タウザンド」 (tousand) と読む。ネイティブには忘れられがちな発音のルールだが、日常会話で使う英語と職務上使う英語は違う。基本は忠実に守るよう心がけている。

英語には学生の頃から苦手意識があった。2013年の夏にパイロット養成課程がスタートしてまだ間もない頃だったが、バイリンガルの教官から、英語力が「minimum level(最低レベル)」にあると言われたこともある。

危機感を抱いて始めたのが、オンラインでの英会話レッスンだった。パイロットの操縦訓練が行われる米アリゾナ州に渡航するまで1年以上、毎日50分パソコンに向かい、テレビ電話でフィリピン人講師と会話を特訓した。「バックストリート・ボーイズ」の歌など好きな洋楽の歌詞を書き写し、気になる表現があれば、すぐに使ってみた。それで表現力が培われたのだろう、TOEIC のスコアが200点以上も伸びた。英語を話しているうちに「日常会話では、言い間違えがあってもいいので、とにかく使うことが上達への道だ」ということに気づいた。

◆専門用語をマスターする

それでも、初めての飛行訓練では操縦に気を取られ、英語で話すべきことが言えなかった。無線からは様々な指示が聞こえてくるし、操縦席からはフライトの状況などを伝えなければならなかったが、頭の中が真っ白になった。「英会話を学ぶのと、職業訓練を英語で受けるのとでは、大きく違った」

その時悟ったのが、自分の言いたいことを「シンプルに伝える」ことの大事さだった。頭の中で難しい文章を組み立てる必要はない、ということだ。例えば、we have information from an aircraft behind us that an outflow of liquid from our left wing was observed(後続機からの知らせで、左翼から液体漏れが見られるそうだ)と地上に報告する場合は a fuel leak is suspected(燃料漏れの疑いあり)とだけ伝える。「(機体などに)トラブルが起きている時は、自分が置かれている状況をずばりと伝えられる technical term(専門用語)を使い、2、3語で説明するのがいい」

パイロットは飛行方法に限らず、気象から、整備の基礎や燃料の計算方法まで、幅広い知識が求められる。アリゾナでの訓練は座学も含まれ、6時間ほどの睡眠時間を除いた自由時間は「ほぼ全て」を日々のフライトの予習復習や専門用語の確認、イメージトレーニングなど運航に関わる勉強に費やした。授業中に聞き取れなかったり、理解があやふやだったりした箇所は、英語を得意とする同僚に尋ね、補った。

operation normal(運航全般に問題なし)、runway clear(滑走路上に障害物なし)、open condition(運航に支障がない天候)など、パイロットが覚えなければならない言葉は少なくないが、重要なのはそれらを使いこなせるかどうかだと、今も思う。

◆「日本と海外をつなぐ」

空ではちょっとした誤解が「自分だけでなく、お客さまや乗務員の命に関わる」ような事態につながりかねない。そのため、職務で英語を使う時は「情報を正確に伝えること」に心を砕いてきた。しかし、今はもう一歩先の英語力も身に着けたい。

その日の仕事を終えて自宅に戻ると、翌日のフライトに備えて天気予報をチェックしたり、海外での航空事情についてのリポートを読んだりする。機内でどんなアナウンスが喜ばれるか、思案することもある。離着陸時のアナウンスなどを機長に任されることがあるからだ。国内線とはいえ、乗客に外国人が混じっていれば、英語で話すこともあるのだ。

人やモノを遠くに運ぶ国際線のパイロットは「日本と海外をつなぐ」重要な役割を果たしている。自分もいずれ、その一翼を担うだろう。そうすれば、英語を使う機会はさらに増える。周囲との「信頼関係を築く」には、専門用語ばかりでなく、日常会話に必要な英語にもさらに磨きをかけなければならない。職務上必要とされる知識や目標とする英語力は「一朝一夕で身に着くものではない」。そうと分かった上で、努力を続けていくのみだ。

(田川理恵)

Speech

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とよだ・じゅんじ 1985年生まれ。埼玉県出身。明治大学卒。2008年、日本航空に運航乗務職員として採用された。経理業務、パイロット養成課程を経て、17年5月、副操縦士に昇格。Speech

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