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Leaders on the Podium / 米上院で圧倒的な存在感を示したマケイン氏

Reuters

A still image from video shows U.S. Senator John McCain (R-Ariz.) speaking on the floor of the U.S. Senate after returning to Washington for a vote on healthcare reform on July 25.

中山俊宏米上院に「歩く星条旗」のような男がいる。ジョン・マケイン上院議員だ。祖父も父親も四つ星の提督。自身もベトナム戦争時、海軍航空士官として従軍し、1967年に撃墜され、5年間に渡ってホアロー収容所で、厳しい捕虜生活を送った。その時のけがと拷問で今でも腕が肩より上には上がらない。2000年と08年の大統領選挙で共和党から出馬し、00年は予備選挙で破れるも、maverick(一匹狼)の異名をとり、資金、人脈共に圧倒的なジョージ・W・ブッシュ元大統領を脅かした。08年は、党指名を獲得し、オバマ前大統領と歴史的な選挙戦を繰り広げた。

「上院の巨人」と呼ばれる議員が何人かいる。日本に馴染みの議員も多い。駐日大使を務めたマイク・マンスフィールド、日系人のダニエル・イノウエ、ケネディ大統領の弟テッド・ケネディの各氏、そしてやはり駐日大使を務めたハワード・ベイカー氏らがそうだ。党派を越え、米国が難しい選択に直面した時に、正しい道筋を示した政治家として記憶されている。近年の上院は、悪質な党派政治に侵食され、もはや「巨人」を生み出す場ではなくなりつつある。それでもマケイン氏は間違いなく、その1人として記憶されるだろう。

そのマケイン氏が、7月中旬、脳腫瘍を患っていると公表された。オバマケア廃案をめぐる法案の票読みがなされている最中で、わずかの票も失えない共和党はマケイン氏の復帰を待ち、法案の採決を先延ばしにすることを決めた。1936年生まれのマケイン氏は病状が重く、オバマ氏もツイッターでこうつぶやいた。“John McCain is an American hero & one of the bravest fighters I’ve ever known. Cancer doesn’t know what it’s up against. Give it hell, John.”(ジョン・マケインは米国の英雄で、私が知っている最も勇敢な戦士のうちの一人だ。がんは誰を相手に選んだのか分かっていない。一発かましてやれ、ジョン)。しかし、マケイン氏は、手術の数日後に痛々しい姿で登院し、最終的には他の二人の共和党議員と共に法案に反対し、それは51対49で否決された。深夜に及んだ協議の後、マケイン氏が反対の意思を表明すると、共和党の側からはため息がもれ、民主党の側からは喝采が送られた。7年にも及んだ共和党のオバマケア廃案の主張が座礁した瞬間だった。

マケイン氏は、票決の数日前に上院本会議で演説を行った。全文を読むに値する名演説だ。それまでにも記憶に残る演説はいくつもあったが、これは「ジョン・マケイン」という名前と共に記憶されることになるだろう。米国政治の現状に対する批判だった。“What have we to lose by trying to work together to find those solutions? We’re not getting much done apart. I don’t think any of us feels very proud of our incapacity. Merely preventing your political opponents from doing what they want isn’t the most inspiring work.”(解決策を見出すために協力して、何が失われるというのか。互いに離れていては何もなし得ない。[今の上院の]無能さは、誰も誇りには思えないはずだ。反対党が実現したいと願っていることを妨げるだけでは、やりがいのある仕事だと思えない)

マケイン氏は今後しばらく治療に専念するが、おとなしく退くわけがない。先の演説も愛嬌たっぷりの皮肉で締めくくっている。“I have every intention of returning here and giving many of you cause to regret all the nice things you said about me.”(私は完全復帰するつもりだ。あなたたちは親切な言葉をかけてくれたが、それを後悔させるつもりだ)。米国が今ほど、マケイン氏のような一匹狼の政治家を必要としている時はない。Speech

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中山俊宏(なかやま・としひろ)

慶応義塾大学教授。日本国際問題研究所客員研究員。現代アメリカ政治・外交が専門。著書に「介入するアメリカ」(勁草書房)など。Speech

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