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Leaders on the Podium / ダボスで全面対決を避けたトランプ氏

AFP

U.S. President Donald Trump delivers a speech during the World Economic Forum annual meeting on Jan. 26 in Davos, Switzerland.

中山俊宏1月26日に行われたトランプ米大統領の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)での演説は、予想外にと言うべきか、予想通りにと言うべきか、ごく穏当な演説だった。トランプ氏は、大統領候補の時から一貫してグローバリゼーションには批判的だった。しかし、ダボスで本格的なグローバリゼーション批判を行えば、正に全面的な対決になる。そうすることは自覚的に控えたようだ。

“I believe in America. As president of the United States, I will always put America first just like the leaders of other countries should put their country first also. But America first does not mean America alone.”(私はアメリカを信じている。合衆国の大統領として、他の国のリーダーが自分の国を第一に考えるのと同様に、私はアメリカを第一に考える。しかし、アメリカ・ファーストはアメリカが孤立するということではない)。

こう述べたトランプ氏は、米国経済がいかに好調かを繰り返し強調し、直球のグローバリゼーション批判は封印した。スピーチを起案したのは、ゲイリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長が率いるチームだと伝えられている。経済チームで、コーン氏はグローバリゼーションにもっとも理解のある人物だと言われている。しかし、トランプ政権のスピーチライターと言えば、まだ30代前半のスティーブン・ミラー氏が真っ先に思いつく。「アメリカ・ファースト」は、トランプ氏以上にミラー氏の世界観でもある。ミラー氏はここのところ、1月30日に行われたトランプ大統領初の一般教書演説 (State of the Union Address) に掛かりっきりだったため、コーン氏にダボス演説が回ってきたという。ミラー氏がダボス演説を起案していれば、全然違うトーンになっていただろう。

トランプ氏は演説で、自由貿易協定(FTA)について、基本的には従来の主張だった二国間通商協定を優先しつつ、環太平洋経済連携協定(TPP)にも理解を示したと報道された。“As I have said, the United States is prepared to negotiate mutually beneficial, bilateral trade agreements with all countries. This will include the countries within TPP, which are very important. We have agreements with several of them already. We would consider negotiating with the rest either individually or perhaps as a group if it is in the interests of all.”(これまで述べてきたように、合衆国は相互に利益をもたらす二国間の通商協定について全ての国と交渉する用意がある。これが重要だが、これにはTPPに参加する国々も含まれる。我々はその中の数カ国とすでに合意がある。残りの国とも個別に、そしてそれが皆の利益になるなら、もしかするとグループとして交渉することも検討する)。

これを読むと一部で報道された「復帰を示唆」というのは若干行き過ぎではないか。むしろ、TPPを離脱したことに対する批判をかわすために、含みを持たせたという程度ではないだろうか。

グローバリゼーション批判と並んで、選挙中のトランプ候補のおはこの一つだったのが、中国批判だ。ダボスでは中国を名指しにはしなかったが、標的にした。“The United States will no longer turn a blind eye to unfair economic practices, including massive intellectual property theft, industrial subsidies, and pervasive state-led economic planning.”(大がかりな知的財産の盗用、産業助成金、広範囲に及ぶ国家主導の経済計画など、不公正な経済活動を、合衆国はもはや放置しない)。

これが中国を指していることは明らかだ。昨年のダボス会議は、トランプ氏が不在で、中国の習近平国家主席が事実上の主役だった。今年トリを務めたトランプ氏は、その中国をちくりとけん制したということだろう。

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中山俊宏(なかやま・としひろ) 慶応義塾大学教授。日本国際問題研究所客員研究員。現代アメリカ政治・外交が専門。著書に「介入するアメリカ」(勁草書房)など。

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