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Leaders on the Podium / 人事の混乱が続く米トランプ政権

中山俊宏米トランプ政権が発足して1年強。ここ1か月ばかりで、人の入れ替わりが急速に進んでいる。これを「混乱」と形容する論評が多いが、一方で、トランプ氏は就任1年を経て、大統領職に慣れ始め、周りから薦められて選んだスタッフを解任し、自分が好きな人たちに置き換えているのだとの見方もある。トランプ氏は大統領職を楽しみ始めているのではないかとの見方さえある。仮に後者が実態に近いとすると、政権運営は落ち着いていくどころか、「トランプ・ショック」はまだ序の口ということになる。

実際、鉄鋼・アルミ関税を始めとする通商政策、慎重な検討もなく発表された米朝首脳会談、メキシコ国境への National Guard(州兵)の派遣など、次々と大統領の「思いつき」が政策として発表されている。

解任されたのは、大統領との関係がうまくいっていないことが常々うわさされていたティラーソン国務長官とマクマスター安全保障担当大統領補佐官、関税の一件で大統領と意見が合わなかった自由貿易派のコーン経済担当大統領補佐官、そしてオバマ政権からの引き継ぎ人事だったシュルキン退役軍人長官だ。ティラーソン氏やシュルキン氏の解任時の発言を見ると、事は穏便に運ばなかったことがうかがえる。

まずはティラーソン氏の退任時のスピーチを見てみよう。氏は国務省玄関口に集まった省職員に向かって “This can be a very mean-spirited town, but you don’t have to participate in that.”(この街[ワシントン]は時にとても意地悪い。しかし、あなたがたはそれに参加することはない)と述べ、ワシントン経験が決して納得がいくものではなかったことをにおわせた。そして、大統領に感謝の意を表明することなく、演説を閉じた。事前の予告はあったらしいが、解任をツイッターを介して知らされたことへのいらだちはかなりのものだったのだろう。

マクマスター氏の場合は、定型の退任の声明が発表されつつも、記者とのやり取りの中で、政権のロシアへの対策が十分ではなかったことを認めた。トランプ政権の対ロ政策は、ロシアが米国に対して行ったことを考えれば、かなり甘いのではないかと批判されている。トランプ氏がプーチン大統領その人を決して批判しようとしないことが、「ロシア・ゲート」との絡みで疑いの目を向けられている。マクマスター氏は “We have failed to impose sufficient costs ... the Kremlin’s confidence is growing ... Russia has used old and new forms of aggression to undermine our open societies.”(我々は[ロシアに対して]十分なコストを強いることに失敗した…クレムリンは自信を強めている…ロシアは我々の開かれた社会の土台を切り崩すべく、新旧様々な攻撃手段を用いている)と述べ、大統領批判は避けながら、対ロ政策の欠陥を認めている。

関税の是非を巡る論争でライトハイザー通商代表らに敗れたコーン氏の辞任は、自由貿易の原則を捨て去る政権には与しないとの意思表明だった。氏は昨夏、大統領のホワイト・ナショナリズムに関する発言に抗議し、辞任を真剣に検討したと伝えられている。このことと関税の一件が積み重なり、今回の辞任に至ったのだろう。

シュルキン氏の場合は状況が混乱している。ホワイトハウスは氏の辞任を発表したが、本人は解任されたと主張している。テレビのインタビューに応え、”There would be no reason for me to resign. I made a commitment, I took an oath, and I was here to fight for our veterans.”(私が辞任する理由なんてない。私は責任を引き受け、宣誓もし、退役軍人のために戦うためにここにいた)と述べ、解任だったと強調した。

人の入れ替えのうわさはまだ絶えない。混乱は続きそうだが、当の大統領は全く問題にしていないかもしれない。

* * *

中山俊宏(なかやま・としひろ) 慶応義塾大学教授。日本国際問題研究所客員研究員。現代アメリカ政治・外交が専門。著書に「介入するアメリカ」(勁草書房)など。

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