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Leaders on the Podium / 米国の対中楽観論に幕を引いたペンス米副大統領の演説

中山俊宏 マイク・ペンス米副大統領が10月4日、ハドソン研究所で行った中国に関するスピーチが話題になっている。今までにないほど、中国に対して厳しい内容のものだったからだ。しかも、それが副大統領から発せられたのだから、インパクトは大きかった。ストリーミングで視聴していて、随分と厳しい内容だなと思いつつ、どこかで方向転換をするんだろうとなにげなく聞いていたところ、最後まで厳しい内容で押し切った。

聴き終わった後、アメリカの対中政策の歴史的方向転換を耳にしたのかもしれないと思うに至った。かつての中国と西側の間には「竹のカーテン」があると言われたが、「第二のフルトン演説(鉄のカーテン演説)」かもしれないとの評価も飛び交った。

アメリカはこれまで中国に対しては警戒しつつも基本的には engage(関与)する方向で向き合ってきた。その発想の根幹には、中国とは、ソ連とは違い、経済的に深く結びついていて、それを梃子にして中国との関係をポジティブな方向に導いていくことができるという発想があった。中国の台頭は不可避だとしても、その台頭の仕方を shape(形づくる)できるという考え方だ。ソ連との関係においては、そのような発想はなかった。時として、中国に対して厳しい姿勢をとりつつも、engage それ自身を放棄するような姿勢をとったことはなかった。

兆候がなかったわけではない。例えば、今からおよそ10年ほど前、ジェームズ・マンという人が The China Fantasy(邦訳名「危険な幻想 中国が民主化しなかったら世界はどうなる?」)という本を著し、中国が我々が思い描くように変わるという fantasy(幻想)を捨てなければならないと主張していた。

ワシントンに滞在していて、確かにアメリカの中国に対する姿勢が厳しくなってきているのは感じていたし、特に通商に関しては、トランプ政権は今年に入ってから中国とは対決姿勢で臨んでいた。しかし、ペンス演説は、通商関係に限定されるものではなく、中国との関係そのものを見直そうとするような内容だった。具体的にどこかを例示しようとしても、とにかく厳しい内容一辺倒なので、引用箇所を迷ってしまうほどだ。

例えば冒頭近くにこんな一説がでてくる。“... Beijing is employing a whole-of-government approach, using political, economic, and military tools, as well as propaganda, to advance its influence and benefit its interests in the United States. China is also applying this power in more proactive ways than ever before, to exert influence and interfere in the domestic policy and politics of this country.” (中国政府は、政治的、経済的、軍事的ツール、そしてプロパガンダをも用いたホール・オブ・ガバメント・アプローチ[コーディネートされた政府全体の取り組み]で、アメリカ国内における中国の影響力と利益を増進させようとしている。そして中国は、その力をこれまでにないくらい積極的に用いて、この国の国内政策と政治に影響を及ぼし、干渉しようとしている。)

この一節は、異質な存在である中国がアメリカの内部に入り込んでいる違和感を刺激するもので、冷戦初期のソ連に関する言説と構造が似ている。多くの人が、このペンス演説を「第二の鉄のカーテン演説」と評したのは、単にそれが中国に対して厳しかったからではなく、その言説構造が似ていたからだ。

China fantasy については歯に衣をきせない。“After the fall of the Soviet Union, we assumed that a free China was inevitable. Heady with optimism at the turn of the 21st Century, America agreed to give Beijing open access to our economy, and we brought China into the World Trade Organization. ... But that hope has gone unfulfilled.” (ソ連の崩壊後、自由な中国は必然だと考えていた。世紀の変わり目には、我々自身も楽観主義に酔いしれ、アメリカは北京に対して経済的な門戸を開くことに合意し、中国をWTOに導き入れた。... しかし、その期待はいまだ実現していない。)

果たして、このペンス演説が、アメリカのこれまでの対中政策との根本的な決別を示すものなのか、それとも強い立場から交渉しようとするある種の bluff(威嚇)なのか、それははっきりとはしない。しかし、中国の台頭について楽観的な期待を抱き、その台頭の仕方を協調的に shape できるとする時代には幕が引かれたような気がする。

* * *

中山俊宏(なかやま・としひろ) 慶応義塾大学教授。2018年9月から米ウィルソン・センターのジャパン・フェロー。現代アメリカ政治・外交が専門。著書に「介入するアメリカ」(勁草書房)など。Speech

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